この記事では、レースの勝敗を左右する重要な要素の1つ「部品交換」について解説しています。「部品交換ってよく見るけど、どれくらいレースに影響あるの?」「どの部品に注目しておけばいいの?」と悩んでいませんか?
実は、部品交換というのは舟券予想をするに当たって非常に重要な意味を持っています。
この記事を読めば、どの部品が交換されても臆することなく舟券予想をすることが出来るようになりますよ!
部品交換をする目的は部品によって異なる
部品交換の主な目的は「モーター性能の向上」です。
ですが、各パーツによって交換する意味や効果は様々。ここでは、それぞれ各部品の交換するメリットやデメリットを解説していきます。
【舟券への影響度順】全部で9個の部品たち
レース予想において、モーターの性能は重要な判断要素の1つです。そのため、レーサーがモーター部品交換をすると必ず発表されます。
ボートレースでの勝率を高めるため、各部品の交換目的やメリット&デメリットなどについて詳しくみていきましょう。
※()内は略称です
①ピストンリング(リ)
・部品説明
ピストンの前後の動きを円滑にする役割を果たしている部品です(モーターにはピストンが2つ付いています)。
ピストンリングは部品の中で最も交換頻度の高い部品の1つです。しかし、モーターの性能に大きく影響を及ぼす傾向にあり、モーター調整の中でも重要なポイントの1つになります。
またピストンリングはピストンの運動を円滑にするだけでなく、隙間から空気とガソリンを霧状にして混ぜた「混合気」が漏れるのを防ぎ、熱効率を高く保持できる部品でもあります。
・交換する目的
モーター性能を向上させることです。交換することで、ピストンの運動がスムーズになってモーターのパワーアップが期待できます。
摩耗によって頻繁に交換され、状況に応じて新品と中古のいずれかを選ぶことが可能です。
・舟券への影響度
ピストンリングは、交換してもモーターの性能に大きな差はないとも言われており、舟券への影響度は低いと考えられます。
しかし、ピストンリングを3本以上交換している場合には注意が必要です。3本以上を交換するということは、レースで使ない状態を意味するので活躍はあまり期待できません。
②ピストン(ピ)
・部品説明
シリンダー内を高速で動いている部品です。ピストンが前後に動きエネルギーを生み出す構造になっています。
ピストンがシリンダー内の燃焼室で発生した燃焼ガスの熱膨張により往復運動することで、クランクシャフトへ動力を伝え、同時に吸気と排気の開閉を行うのです。
・交換する目的
スタート時の加速アップです。また、試運転時にモーターの調子が悪そうな場合にも交換され、2気筒のモーターに搭載される2本のピストンのうち、片方もしくは両方を交換することで調整可能です。
転覆した際に交換されることが多い点もピストンの特徴といえます。
・舟券への影響度
ピストンの交換は大きな作業になりますがバランス調整の意味合いが強く、舟券への影響は低いと考えられます。
しかし、ピストンを3本以上交換していた場合は注意が必要です。この場合、モーターがパワー不足に陥っていることで交換している可能性があります。逆に、1本や2本の交換であればモーターのパワーを上げるためなどの前向きな整備であると判断できるでしょう。
③プロペラ(プ)
・部品説明
別名「ペラ」とも呼ばれ、モーターに取り付けられる部品です。羽の回転によって後方に向かう水流が起き、ボートの推進力を作ります。
以前はレーサーがそれぞれに保有していました(持ちペラ制)が、現在はヤマト製のプロペラが抽選によって各レーサーに配布されます。モーターとは異なり、ボートレーサーがハンマーで叩いて調整するため、レーサーの調整技術が大きく影響する部品です。
・交換する目的
プロペラは破損が生じた際にのみ交換するケースがほとんどです。亀裂や変形などの交換基準が設けられており、それを超えると新しいプロペラに交換します。
プロペラはモーターの抽選時にセットになって付いてくるもので、プロペラを調整する場合はアナウンスをしません。しかし、プロペラ自体を交換した際は展示航走時にアナウンスされます。
・舟券への影響度
プロペラは、レーサー自身が木製ハンマーで叩いて自分好みの形に変更する部品。何度も叩いたり歪みが生じたりした場合には、整備士と相談して交換することもあります。レースへの影響は少ないものの、気温や気候に合わせてモーターの回転数を調整するケースも。ボートレーサーの特徴が色濃くでるという部分では、影響を考慮する必要はありますね。
④ギヤケース(ギ)
・部品説明
プロペラと直結するパーツで、モーターから伝わる縦回転を横回転に変換する部品です。
ボートは車とは異なりギヤが1つしかなく、変速はできないものの、しっかり整備することで車のローギヤのようにもできます。多くのボートレーサーがその感触を意識して整備する部分でもあります。
・交換する目的
「横回転が不安定」「破損している」「部品に歪みがあり、水流が安定しない」といった問題点を解消することが目的です。プロペラの取り付け部品にギヤを上手くかみ合わせることで出足のアップが期待できます。
一方で浅く嚙合わせることで伸びを付けることも可能です。ちなみにギヤケースは後述するキャリアボデーと一体になっている点も認識しておきましょう。
・舟券への影響度
ギヤケースはしばしば交換される部品です。調整しやすい部品でもあるのでレースへの影響はそれほど大きくないでしょう。
ただしギヤケースの交換によって出足型や伸び型を選びやすく、交換後は変化が分かりやすい部品の一つです。交換しているということは、あまり良くないモーターでもある可能性もあるので、展示では念の為に確認しておきましょう。
⑤キャブレター(キ)
・部品説明
キャプレターとはモーターのパワーを司る部分で、空気とガソリンが混ざった混合気をモーターに噴射する部品です。ガソリンを噴射できなければ、正常な爆発エネルギーが得られません。
また、不十分な空気の噴射では不完全燃焼が発生して、エネルギーのロスにもつながります。キャプレターが悪いとスタートに大きく影響し、大幅にスタートが遅れた場合はキャブレターの不調が原因である場合が多いです。
・交換する目的
燃焼効率を向上させることで、モーター性能の底上げをすることが目的です。天候に応じて交換するケースもあります。
キャブレター調整によってモーターの性能も変わってくるため、ボートレーサーの腕の見せ所。また細かい部分にゴミや塩が詰まるケースもあり、分解後は洗浄液に漬けて再度乾かすという作業を行います。
・舟券への影響度
天気によってキャブレターの交換が行われることもあれば、ボートの状態を見て交換されることもあったりと、それなりに交換頻度の高い(交換のハードルが低い)部品のため、舟券への影響度はそれほど考慮する必要はないかと思います。
ただし前述のとおり、ボートレーサーの腕によって調整技術に差があり、交換にはボートレーサーの判断が重要なポイントとなる点は考慮すべきでしょう。
⑥電気一式(電)
・部品説明
シリンダーに送られた混合気に引火させ、点火プラグに送る電気を生み出す部品です。ちなみに、点火プラグのみがボートレーサーの持ち物となります。
フライホイールの回転によって生じる低圧電流から、イグニッションコイルによる高圧電流を発生させます。そして適切なタイミングで、燃焼室内でスパークプラグに火花を飛ばす役割をしているのがこの電気一式です。
・交換する目的
シリンダー内の点火効率をアップさせることが目的です。交換することでシリンダー内の点火効率が高まり、点火効率がアップするとモーターのパワーアップにつながり、ボート本来のスピードを取り戻せます。電気系統の配線を交換せず劣化したままの状態だとパワーダウンを起こし、本来のパフォーマンスを発揮できない場合が多くなるのです。
また転覆によりモーターが水に浸かった場合はモーターを分解し、灯油で洗浄します。しかしこの電気一式は洗浄出来ず、交換しなければなりません。
・舟券への影響度
電気系統一式を交換するのは前走で転覆した場合がほとんどです。モーターは水没した際のダメージは大きく、現状維持もしくは不調となっている可能性も十分に考えられます。転覆前より調子が悪くなっていると考えるほうが無難と言えます。
⑦キャリアボデー(ボ)
・部品説明
モーターとプロペラの中間に位置する部品です。排気ガスの通り道にあたる部分のため、他の部品との接続によって出力が大きく変わります。
キャリアボデー本体はパワーを生み出す部品ではありませんが、事故やトラブルによって破損や歪みが生じた際に交換されることの多い部品です。車でいうとマフラーのような位置付けで、衝撃等で歪んでいると乗り心地が悪くなります。
・交換する目的
ボートの操作性の向上が目的です。事故等によってキャリアボデーに何らかの異常が起きていた場合、ボートの乗り心地や操作性が低下してレースの勝敗に大きな影響を与えます。
キャリアボデーの交換によって排気ガスがスムーズに通るようになり、モーター性能が向上するため、乗り心地や操作性が改善されるのです。
・舟券への影響度
キャリアボデーは、成績があまり良くない時やモーターのパワーを上昇させたい時に交換される部品です。
キャリアボデーを交換している場合は、特に展示航走で注目しましょう。展示航走で状態が悪いと判断した際は、舟券の対象から外してもよいかもしれません。
⑧シリンダーケース(シ)
・部品説明
ピストンが通る筒の形をした部品です。シリンダーケースの中にはピストンとシリンダーが入っています。クランクケースから送られた混合気を吸気口より取り込み、ピストンによって圧縮された混合気にスパークプラグで着火し爆発燃焼をおこします。その力によりピストンを往復運動させ、燃焼したガスを排気口へ排出する役目を果たす部品です。
・交換する目的
燃焼効率を上昇させモーター本来の力を発揮できるようにすることが目的です。そのため、交換するということはモーターの状態が悪い場合がほとんどです。
また、シリンダーケースは大幅にパワー上昇を目指す際に交換します。クランクシャフトの次に大幅な整備が必要となるでしょう。
・舟券への影響度
シリンダーケースの交換があった場合は注意が必要です。シリンダーケースはパフォーマンスに直結する大切な部品であり、交換されていても良いレースができる状態ではなく、何か致命的な問題が起きたと考えるべきでしょう。
モーターの整備履歴を見てシリンダーケースを交換している場合は、その舟券の購入は避けたほうが無難です。
⑨クランクシャフト(ク)
・部品説明
モーターの中核部であり、モーターを構成する最も重要な部品です。クランクシャフトが機能しなければ、そもそもボートは動きません。
クランクシャフトはコンロッドを介してピストンの往復運動を回転運動に変え、動力を取り出す役目を果たすことでボートを動かしています。現用のモーターは直列2気筒で、等間隔爆発方式です。
・交換する目的
モーターの回転を改善することが目的です。他の部品を一通り整備してもなおモーターの調子が悪い場合や、衝突・転覆が起きた際に交換されます。なぜならクランクシャフトにねじれや歪みがあると、そのまま性能に影響を及ぼしてしまうためです。
このことから、クランクシャフトを交換するのは”最終手段”と考えてよいでしょう。
・舟券への影響度
前述の通り、クランクシャフトの交換は滅多に行われるものではなく、交換される時はモーターに大きな問題が生じている場合がほとんどです。交換後すぐに元の性能に戻るとは考えにくいので、舟券への影響度は大きいでしょう。
モーターの整備履歴を見て、クランクシャフトを交換しているボートレーサーがいた場合、その舟券を買うのは避けたほうがよいでしょう。
レース(舟券)への影響
モーター性能は、レースに大きく影響を与えます。多くの場合モーターの情報は出走表に記載されますが、「どのような調整をしたのか」という具体的な内容は記載されません。そこで出走表の中で注目したいのが「モーター勝率」です。
モーター勝率から、出場するボートレーサーのモーターの情報だけでなく、どのような部品交換をしたのかも把握できます。中でもクランクシャフトやシリンダーケースが交換されている場合は、モーターに大きな問題を抱えている可能性が高いと判断しましょう。
出走表で確認した後は、展示航走でボートの調子を見ておくことをおすすめします。展示航走で「ターンがスムーズに行えている」「スタートでスピードに乗れている」といった場合は、モーターの調子が良くなっていると判断できるでしょう。
まとめ
「シリンダーケース」と「クランクシャフト」の交換は要注意!ひとまず、これだけは知識として持って帰ってほしいと思います。
それ以外の交換部品に関しては、レース観戦を重ねていく毎に徐々に重要性を押さえていけるはずです。
慣れていくと「どの部品を交換したのか」を把握して上で展示航走を観ることによって、舟券の買いやすさがかなり違ったものになると思いますよ。